秋、金木犀が香る日。
秋。


あなたと会った季節。木漏れ日の美しい季節。


光が窓をくすぐるみたいな、冬より柔らかで、夏より橙色の日差し。


貸し借りした講義のルーズリーフ。

お礼にもらったお高いアイス。

二人で下ろして回ったゼミ室のブラインド。


ゼミのみんなで馬鹿みたいにお酒を飲んだこと。

卒論発表の打ち上げで牡蠣パーティーをしたこと。

大学時代、何かといえばチャイを飲んでいたこと。

バイト先のカフェに冷やかしに行ったこと。

並んで歩いて、砂利道で転びそうになったとき、助けてもらったこと。


いつも同じお店、同じ席、同じメニューを頼むのに、今年は時間が早いから、お酒を飲まない。


少しずつ変わっていく。少しずつ過ぎていく。


きっと少しずつ、思い出になる。


アトマイザーでつけ直した香水が、今日はひときわ甘く、鼻につく。




Fin.
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