戦国武将織田信長の不器用な恋
二人は目を見合わせて呆気に取られていた。

「朝まで近づくな」

信長は背を向けたままそう命じた。

座敷に入ると、マミは信長の肩から解放された。

しかし、その途端、身体が重なり、唇を奪われた。

やっと唇が離れると、険しい眼差しがマミを睨んだ。

「信玄に抱かれたのか」

「えっ」

マミは信長の言葉が聞き取れなかった。

信長はさらに強い口調でマミに問いただした。

「信玄に抱かれたのかと聞いている」

この時の信長の眼差しは寂しそうで、悲しい表情で見つめられた。

信長様はなんでこんな表情をするの?

マミは信長を困らせてやろうかと思ったが、そんな気持ちも失せて、

静かに答えた。

「抱かれていません」

「そうか」
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