再会は光の中で~ひっそりと子育てしていたら、あなたの愛に包まれました~
「やっ……」
指先を吸われて、羞恥心でいっぱいになった。思わず腕を引っ込めようとするが、掴んだ手を離してはくれない。紘登は真剣な表情で傷口を舐めている。
「痛かっただろ? すぐに応急処置をするから」
ドキドキが収まらないまま、紘登の姿を視線で追いかけた。キッチンのシンクにある引き出しから綺麗なナプキンを取り出すと、そっと私の指先をくるむ。カウンター席に座らせると、救急セットのような箱を持ってきて、絆創膏を貼ってくれた。
「ごめんなさい。まな板やシンクを汚してしまって。出血が収まったら支度するから」
「今日はもういいよ。パンと簡単な料理で良ければ、俺が作るから」
「紘登、料理できるの?」
「俺を見くびるなよ。こう見えて、一人暮らし歴は長いんだぞ。時々、簡単なものなら作ってる」
一緒に過ごしていた頃は皿洗いを手伝ってくれてはいたけど、彼が料理する姿は見ていない。紘登がキッチンで準備している間、その物音で千帆が起きてくる。私の隣にちょこんと座ると、二人で紘登の料理姿を見守ることになった。
紘登は手慣れた様子でボウルに卵を落とし、箸でかき混ぜる。溶いた卵を熱したフライパンの上でふんわりとくるみ、皿の上へ乗せた。ケチャップを取り出し何かを描く。
「ほら、まずは千帆ちゃんだ。特製オムレツをどうぞ」