イケメン俳優パパ『生田 蓮』に恋をして――。
 葉が紅く染まり始めた季節。

 十七時頃、いつものように保育園に柚希を迎えに行くと、彼もちょうど同じ時間に来ていた。
 お互いに目を合わせ、会釈をした後に、それぞれ自分の子供が帰り支度をするのを見守り、玄関で靴を履く。

「斗和ちゃん、バイバイ!」
「柚希ちゃん、バイバイ!」

 親同士も「さようなら」と言い、会釈して、私と柚希は先に外へ出た。外に出るとタイミング悪く土砂降りの雨が降ってきていた。
「うわ、さっきまで降ってなかったし、天気予報もずっとくもりってなってたのに、雨すごいね」
「ママと柚希、いっぱい濡れちゃうね」

 ふたりで話をしていると、彼が話しかけてきた。

「自転車ですか?」
「あ、はい」
「車、乗ってきます?」
「はい、えっ、えっ? いや、でも……」
「うちの車、大きいから自転車乗せれますよ!」
「いや、そういうのじゃなくって」

 人気イケメン俳優の車に自転車を乗せてもらい、さらに、送ってもらうだなんて、想像しただけで、無理。心臓が飛び出そう。

「これ、多分通り雨で、ちょっとしたらやみそうなので、待ってみます」
 私がそう言った後、斗和ちゃんが叫んだ。
「柚希ちゃんと帰りたい!」
「斗和、柚希ちゃんのママは待ってるって言ってるよ! 無理言ったら、柚希ちゃんのママ、困っちゃうよ!」
「一緒に帰りたい……」
 斗和ちゃんは、泣きだしそうな気配だった。
 ――ああ、どうしよう。泣かしちゃうのもなぁ。

「あ、じゃあ、よろしくお願いします」

 斗和ちゃんが泣かないように、私は家まで送ってもらうことにした。
 
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