Macaron Marriage
 翔もコートを羽織っているが、服越しに聞こえてくる心臓の音が、萌音の耳に心地よく響く。何よりも温かな彼の腕の中に包まれていると、安心感を覚える。

 ずっとこのままならいいのに……翔の胸に体を預けながら、萌音はふとそんなことを思う。

「……日本に帰国してからのこの数ヶ月、本当にいろいろなことがあったなって、最近すごく思うの……なんていうか、こんなに気持ちの変化があるとは思わなかった……」
「例えばどんな?」
「……翔さんへの気持ちの変化が一番かなぁ。好きだと思っていても、私一人じゃこんなふうに踏み出せなかったと思うの。上野夫妻や松島夫妻と出会って、恋に対しての意識が変わった……」

 萌音は体を起こすと、翔の頬に手を添える。すると翔は嬉しそうにその手に自分の手を重ねた。

「翔さんにね……触れたくて仕方ないの。キスしたいって思うし、朝目が覚めたら隣にいてほしい……きっと一人じゃこんな気持ちにはならなかった。人との出会いが私を成長……というか、貪欲にさせたんだと思うの」
「……じゃあ萌音に質問。今はどうしたい?」

 翔が不敵な笑顔を浮かべて尋ねるものだから、萌音は恥ずかしくて目を逸らしてしまう。

「なんでもいいよ。教えて。それとももう一つゴーフル食べる?」

 からかうように笑う翔の首に手を回し、萌音は彼の唇を塞いだ。

「……いつだって翔さんに触れたいって思ってる……」
「うん……俺も」
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