Macaron Marriage
「でも……あと半年は自由にしていい約束でしょ? 顔合わせだってもっと先でも……」
「だからだよ。どうせ半年後には結婚するんだ。今会っても変わりはないだろう」

 父親の言葉が間違っていないからこそ、反論出来ないもどかしさを感じる。

 自分の人生だからと翔さんとの関係を望んだけれど、その間も私を待っている人がいるのも事実。やっぱり自分の意志だけではどうにもならないのかしら……。

 父親の顔を真っ直ぐに見ることが出来ず、俯いたまま拳を握りしめる。

「萌音、これはもう何年も前から決まっていることなんだ。お前もわかっているだろう?」
「……それはわかっているけど……」
「今まで散々お前の気持ちを尊重して自由を与えてきたつもりだよ」
「それは違うわ。私がパパに抗っただけよ」
「まぁそれもそうだな。だとしても好きなことに打ち込むことは出来ただろう? わたしだって萌音を無理矢理連れ帰ることは出来たけど、しなかった。それはお前が可愛いからに他ならないんだよ」

 確かにそうかもしれない。パパなりに私を自由にしてくれていたのか……。

 萌音はため息をつくと、悲しげな顔で父親を見つめた。

「わかりました。いつですか?」
「……明日の昼だ。迎えを寄越すから、準備をして待っていなさい」
「明日⁈ そんな……突然過ぎる……」
「そうでないとまた逃げてしまうだろ?」

 落ち込む萌音の肩を父親はそっと叩くと、小さく微笑んだ。

「大丈夫だよ。お前が思っているような結末にはならないはずだから」

 そんなこと無理よ……だって私には好きな人がいるんだもの。その人でなければ、相手がどんなに良い人だとしても何も変わらない。

「では私はそろそろ行くよ。今夜は会食があってね。遅くなると思うからここではなくホテルに泊まるよ」

 萌音はただ頷くと、華子が父親を見送る音を聞いていた。
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