Macaron Marriage

13 秘められた真実

 いつもよりも早く目が覚めた翔は、ベッドでゆっくりすることもなく洗面所に向かう。そしてそのまま身支度を整え始めた。

 昨日は萌音の父親である池上社長との会食だった。仕事関連の話をしながらも、萌音が結婚に応じないことを何度も謝罪してきたのだ。

『今度こそ顔合わせには連れて行きますので』

 池上社長はそう言って頭を下げたが、翔としてはむしろ今の萌音との関係は願っていたことであり、何も困ってはいない。

 どうしたものか……話しておくべきなのだろうか、それともこのままその日が来るのを待つべきか……。

 ただ翔の心に引っかかったのは、池上社長の"萌音を連れて行く"という発言だった。

 萌音は確実に俺を愛している。それなのに婚約者との顔合わせを強要されているんだから、きっと傷付いて悩んでいるに違いない。それなのに今夜は彼女の元に行くことは出来ないし、寝ているところを起こすわけにもいかない。

 池上社長との会食の後に萌音の家の前まで行ったものの、案の定明かりは消えていたので、そのまま自宅へと帰ったのだ。

 とりあえず明日の朝に萌音の所へ行ってみよう。彼女のことだから、いろいろ考え込んでいるような気がして心配になる。

 だからこそ翔自身も深い眠りに落ちることはなく、目が覚めるのも早かったのだ。

 キッチンからは元基が朝食を作る音が響いてくる。彼も起きたのかと思いながら、お昼の顔合わせには萌音と二人で行くつもりでスーツに身を包む。

 それから翔はキッチンに向かうと、カウンター前の椅子に腰を下ろした。

 キッチンの中では元基が手際よくオムレツとサラダ、スープとパンをワンプレートに載せて翔に手渡した。

「ありがとう」
「まぁ一応今日だし、俺なりに気にしてるんだけどね」

 昨日の会食がレストランで行われたため、元基もそれなりに事情を察していた。萌音とも面識があるので、彼なりに心配をしているようだった。

 元基はカウンターの奥で険しい表情を浮かべると、翔をじっと見据える。

「そろそろ言うんだろ? じゃないと萌音ちゃんが気の毒過ぎる」
「わかってるよ。今萌音が傷付いているのならそれは俺のせいだし、ちゃんと話すよ」
「必ずハッピーエンドにするって言ったのは翔だからな。ちゃんとそうなるようにしろよ」
「もちろんだよ」

 元基の言葉を真摯に受け止めながら、翔は時計に目をやりながら急いで食事を口へと運んだ。
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