Macaron Marriage
 体を起こしてドアの方を見ると、濡れた髪を一つにまとめ、体にバスタオルを巻いて気まずそうにしている萌音がドアの陰に立ち尽くしている。

「どうしたの?」

 驚いたように尋ねた翔に、萌音は頬を真っ赤に染めて俯いてしまう。

「あの……下着は脱衣所に置いてあったんだけど、その、服がなくて……」

 部屋の奥のウォークインクローゼットを指差している萌音を見て、翔は思わず吹き出してしまう。こっちは必死に抑えてるっていうのに……クスクス笑いながら翔はすっと立ち上がると、ウォークインクローゼットの前まで歩いていってドアを開けた。

 萌音がその様子を戸惑いながら見ていると、翔はニヤリと笑いかける。

「さぁ、どうぞ。それとも俺が選んであげようか?」
「そ、それは遠慮します!」

 意を決した萌音が勢いよくウォークインクローゼットに飛び込むと、笑いながら翔も中へ入りドアを閉めてしまう。

「な、何で閉めちゃうの……?」

 窓はなく薄暗い電気が照らす中、服を選んでいるのか、翔の顔を見ないようにしているのか、萌音は背中を向けたまま呟く。

「さぁ……どうしてだと思う?」

 萌音の体を背後から抱きしめると、耳元にそっと口づける。彼女の口元から甘い吐息が漏れ、翔は居ても立っても居られずに萌音の体を包んでいたバスタオルを取り去ってしまう。

「ダメ……!」
「ダメじゃないくせに……」

 翔の手はブラジャーをずらして胸を揉み始める。胸の頂を指で攻めていくと、萌音の腰が砕け落ちた。

「翔さん……お願いだから……今は待って……。私、話さなきゃいけないことがあるの……」

 息を切らしながら絞り出したその声はどこか涙声だったため、翔はようやく自分が何をしているのか気付き、慌てて手を止めた。
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