Macaron Marriage

14 答え合わせ

 再び車に乗り込むと、翔は行き先は告げずに走り出す。助手席に座っていた萌音は浮かない表情をしており、複雑な気持ちを隠せずにいた。

「騙すような感じになっちゃってごめんね」
「……というか、いつから知ってたの?」

 萌音が聞くと、翔は困ったように首を傾げる。

「その質問はちょっと答えにくいかな。何しろ婚約が決まる前に遡らないといけないからね」
「……どういうこと?」

 翔は運転のため正面を向いたままだが、時折萌音に視線だけを投げかけた。

「この婚約はね、俺たちが出会った日から始まってるんだよ」
「出会った日……?」
「そう。俺はあの日に萌音に恋をして、君のことをずっと忘れられずにいた。そうしたら元基が親にそのことを話してさ、萌音の素性を知ることが出来たんだ。そこからがびっくり。親同士が仕事で面識があって、俺が萌音を好きだっていう話になったら、あっという間に婚約が決まっちゃったんだよ」

 初めて知る事実に萌音は黙って耳を澄ませていたが、翔が自分のことを好きだったということには思わずドキドキしてしまう。

「たださ、二人が子どもの頃の話だし、いきなり婚約って言ったって、現実味がない感じがしてた。その時に萌音が俺の名前を聞くのを断ったって聞いてさ。もう笑いが止まらなかったよ」
「だ、だって……親に将来を決められたくなくて……」
「うん、それでこそ萌音だなって思った。君が変わってないと知ることが出来て、すごくワクワクしたよ。それから萌音に会いたいって思ったんだ」

 翔の想いを知り、萌音の方が嬉しくなってくる。翔もあの頃と何も変わっていないと思うと安心した。

「じゃあ大学の時の出会いは偶然? それとも必然?」
「もちろん偶然だよ。だからこそ俺はまた萌音に恋をしたんだ」

 その言葉が真実ならば、こんなに嬉しいことはない。だって私もあの時に翔さんに恋をしたんだから……。

 車はゆっくりと式場の入口をくぐり、レストランの方へ進んでいく。しかしその駐車場には停車せず、さらに『staff only』と書かれた通路に入っていく。

 数メートルほど進んだ先に小さな庭があり、そこに面するように洋館が建っていた。レストランのテラコッタとは違い、木の温もりが感じられる。

「あの……ここってもしかして……」
「そう、俺の自宅。元基も一緒に住んでるけどね。さっ、行こうか」

 翔はシートベルトを外して車を降りたので、萌音もそれに倣って外へ出た。
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