Macaron Marriage
そこへ萌音の父親が到着する。息を切らし、驚いたように男性を見た。
「翔くんじゃないか! あの……うちの萌音を見ていないかね?」
「あぁ、彼女なら逃げましたよ」
「に、逃げた⁈」
「えぇ、嫌なら逃げればいいんじゃないかと提案したら、速攻逃げました」
「な、なんだって⁈」
「それにしても、《《あの頃と全然変わりませんね》》。飽きないお嬢さんだ。益々楽しくなってきました」
彼の言葉に、父親はぼんやりと首を傾げる。
「いえ、こちらの話です。お嬢さんもいないことだし、今日はもう解散にしましょう。僕も心置きなくフランスに戻れます」
今度は翔の言葉に目を見開いて驚く。
「フランス……ですか?」
「そうなんです。今はフランスの大学に通っているんです。顔合わせをするから帰ってこいと父が聞かないものでこうなりましたが、お嬢さんもまだまだ勉強したいことがたくさんあるようですよ。是非それを応援してあげてください。結婚なんていつだって出来るんですから」
そう言い残して翔は父親の元へ戻ろうと立ち上がる。するとそこに白いタオルハンカチが置いてあることに気付く。手にとってよく見てみると、『MONE』と刺繍がしてあったため、彼女の忘れ物だとわかる。
そのハンカチを彼女の父親に渡そうと声をかけようとしたが、ふと思い留まる。なんとなく彼女のものを持っていたいような気持ちになった。
翔はハンカチをポケットにしまうと、萌音の父親に頭を下げ歩き始める。そしてついに我慢していた笑いが止まらなくなる。
《《スイちゃん》》は相変わらず素直で可愛いかったな。あれから六年も経つのに、言われたことを鵜呑みにするんだから。それに、僕が婚約者かもしれないっていう発想はないのかな。
まぁあの時も自分のことを隠そうとして必死になっていたけど、所々で個人情報を漏らしてたしね。そこがスイちゃんの魅力かもしれないな。
君も僕も、まだまだやりたいことがたくさんある。今は結婚のタイミングじゃないし、君はまだ僕を知らなくていい。
大丈夫。時間はたっぷりあるんだ。それまではやりたいことをやればいい。ただその時が来たら、僕は迷わず君を迎えにいくから。
「翔くんじゃないか! あの……うちの萌音を見ていないかね?」
「あぁ、彼女なら逃げましたよ」
「に、逃げた⁈」
「えぇ、嫌なら逃げればいいんじゃないかと提案したら、速攻逃げました」
「な、なんだって⁈」
「それにしても、《《あの頃と全然変わりませんね》》。飽きないお嬢さんだ。益々楽しくなってきました」
彼の言葉に、父親はぼんやりと首を傾げる。
「いえ、こちらの話です。お嬢さんもいないことだし、今日はもう解散にしましょう。僕も心置きなくフランスに戻れます」
今度は翔の言葉に目を見開いて驚く。
「フランス……ですか?」
「そうなんです。今はフランスの大学に通っているんです。顔合わせをするから帰ってこいと父が聞かないものでこうなりましたが、お嬢さんもまだまだ勉強したいことがたくさんあるようですよ。是非それを応援してあげてください。結婚なんていつだって出来るんですから」
そう言い残して翔は父親の元へ戻ろうと立ち上がる。するとそこに白いタオルハンカチが置いてあることに気付く。手にとってよく見てみると、『MONE』と刺繍がしてあったため、彼女の忘れ物だとわかる。
そのハンカチを彼女の父親に渡そうと声をかけようとしたが、ふと思い留まる。なんとなく彼女のものを持っていたいような気持ちになった。
翔はハンカチをポケットにしまうと、萌音の父親に頭を下げ歩き始める。そしてついに我慢していた笑いが止まらなくなる。
《《スイちゃん》》は相変わらず素直で可愛いかったな。あれから六年も経つのに、言われたことを鵜呑みにするんだから。それに、僕が婚約者かもしれないっていう発想はないのかな。
まぁあの時も自分のことを隠そうとして必死になっていたけど、所々で個人情報を漏らしてたしね。そこがスイちゃんの魅力かもしれないな。
君も僕も、まだまだやりたいことがたくさんある。今は結婚のタイミングじゃないし、君はまだ僕を知らなくていい。
大丈夫。時間はたっぷりあるんだ。それまではやりたいことをやればいい。ただその時が来たら、僕は迷わず君を迎えにいくから。