Macaron Marriage
「あ、あのっ! これ、昨日話していたお土産なんです」
勢いよく差し出すと、緊張から俯いてしまう。
「いいんですか? 逆に気を遣わせてしまったみたいですみません。では有り難く受け取らせていただきますね」
翔は萌音の手から小箱を受け取ると、手のひらに乗せてからそっと蓋を開ける。それから嬉しそうに顔を綻ばせたので、萌音はホッと胸を撫で下ろした。
「これは……真鍮製のバラですね。素敵な品だ……もしかして蚤の市で?」
萌音は頷く。一輪の真鍮製のバラは、手のひらに乗るくらいのサイズだったが、精工が細かく美しい品だった。
「この蝶のブローチを蚤の市で見つけたって聞いていたから、いろいろ探し回ったんです。バラなら男性が胸ポケット近くにつけても素敵かなって思って……」
すると翔はバラのブローチを萌音の手にそっと握らせる。萌音が顔を上げると、翔は彼女の方へからだを寄せた。
「良かったら萌音さんがつけてくれませんか?」
「私が……ですか?」
「ええ、せっかくだから萌音さんに直接つけてもらいたいと思って」
「……わかりました……」
手の中のブローチを持ち直し、後ろのピンをはずそうとする。しかし手が震えてなかなか上手く外せなかった。
何度目かのチャレンジでピンを外すと、萌音は呼吸を整えながら翔のスーツの胸ポケットに入るようにブローチをつける。
熱が伝わって来るほどの距離感と、ほんのりと二人を包み込むように香る香水の匂いに、萌音は眩暈がしそうになる。
ブローチの角度をそっと直しながら、そのまま翔に触れていたい衝動をグッと抑え込んだ。
「……出来ました」
そう言って離れると、机の上にに会った鏡を翔の前に差し出した。
「すごく素敵だ。ありがとうございます」
翔の笑顔があまりにも素敵だったから、萌音は慌てて鏡で顔を隠しながら首を横に振った。
その時だった。翔がゆっくりと窓の方に近付き、外の景色をどこか懐かしそうな表情で眺める。
「……なるほど、こういうふうに見えていたのか……」
「翔さん……?」
ポツリと呟いた翔はハッと我に返ってから、萌音に微笑みかけた。
「いえ、なんでもないです。失礼しました。そうだ。確かこちらはレンタルもやっているんですよね。そのドレスも萌音さんが作っているんですか?」
「ええ、一応……」
萌音が答えると翔は瞳を輝かせたので、その表情からなんとなく彼の意図を汲み取る。
「あの……もし良かったら見ますか?」
「いいんですか? 是非」
萌音は頷くと、隣の部屋へと翔を誘導した。
勢いよく差し出すと、緊張から俯いてしまう。
「いいんですか? 逆に気を遣わせてしまったみたいですみません。では有り難く受け取らせていただきますね」
翔は萌音の手から小箱を受け取ると、手のひらに乗せてからそっと蓋を開ける。それから嬉しそうに顔を綻ばせたので、萌音はホッと胸を撫で下ろした。
「これは……真鍮製のバラですね。素敵な品だ……もしかして蚤の市で?」
萌音は頷く。一輪の真鍮製のバラは、手のひらに乗るくらいのサイズだったが、精工が細かく美しい品だった。
「この蝶のブローチを蚤の市で見つけたって聞いていたから、いろいろ探し回ったんです。バラなら男性が胸ポケット近くにつけても素敵かなって思って……」
すると翔はバラのブローチを萌音の手にそっと握らせる。萌音が顔を上げると、翔は彼女の方へからだを寄せた。
「良かったら萌音さんがつけてくれませんか?」
「私が……ですか?」
「ええ、せっかくだから萌音さんに直接つけてもらいたいと思って」
「……わかりました……」
手の中のブローチを持ち直し、後ろのピンをはずそうとする。しかし手が震えてなかなか上手く外せなかった。
何度目かのチャレンジでピンを外すと、萌音は呼吸を整えながら翔のスーツの胸ポケットに入るようにブローチをつける。
熱が伝わって来るほどの距離感と、ほんのりと二人を包み込むように香る香水の匂いに、萌音は眩暈がしそうになる。
ブローチの角度をそっと直しながら、そのまま翔に触れていたい衝動をグッと抑え込んだ。
「……出来ました」
そう言って離れると、机の上にに会った鏡を翔の前に差し出した。
「すごく素敵だ。ありがとうございます」
翔の笑顔があまりにも素敵だったから、萌音は慌てて鏡で顔を隠しながら首を横に振った。
その時だった。翔がゆっくりと窓の方に近付き、外の景色をどこか懐かしそうな表情で眺める。
「……なるほど、こういうふうに見えていたのか……」
「翔さん……?」
ポツリと呟いた翔はハッと我に返ってから、萌音に微笑みかけた。
「いえ、なんでもないです。失礼しました。そうだ。確かこちらはレンタルもやっているんですよね。そのドレスも萌音さんが作っているんですか?」
「ええ、一応……」
萌音が答えると翔は瞳を輝かせたので、その表情からなんとなく彼の意図を汲み取る。
「あの……もし良かったら見ますか?」
「いいんですか? 是非」
萌音は頷くと、隣の部屋へと翔を誘導した。