Macaron Marriage

「萌音さん、今日の午後は忙しいですか?」
「えっと……いえ、この作業の続きをやる予定でしたが……」
「ではもし良かったら式場にいらっしゃいませんか? 仕事部屋を見せていただいたお礼に、是非萌音さんをご案内したいんです」
「……いいんですか? いや、あの……やっぱりこういう仕事をしていると、式場にすごく興味はあるんです。でも個人の小さなお店だから、なかなかそういう機会がなくて……」
「それなら良かった! ただこれから仕事が一件入ってまして……十五時くらいはどうでしょう?」
「今は新しい依頼も入っていないので大丈夫です! 嬉しいなぁ……是非伺わせてください」

 萌音が満面の笑みで返事をすると、翔も嬉しそうに微笑む。その顔を見た瞬間、萌音の心臓が早鐘のように打ち始める。

 どうしていつもこんなに素敵なんだろう……。思い返せば、翔さん以外の人にこんなにドキドキしたことってないかもしれない……。

「では十五時にお迎えにあがります」

 翔の声でハッと我に返る。

「そ、そんな! 自分で行きますのでお気になさらず……。この間のレストランの奥ですよね? 道はわかりますし、明るい場所できちんと見てみたいんです。外観とかいろいろ」
「……わかりました。ではお待ちしていますね」

 それから翔を門まで見送ると、萌音は急速にやってきた興奮やドキドキを抑えられずにその場に倒れ込んだ。
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