Macaron Marriage

「こっちを向いてください、萌音さん」

 そう言われて、おずおずと翔の方へ向き直る。彼の瞳をじっと見つめると、自然と涙が溢れた。

「本当にロミオくんなの……?」
「えぇ、本物ですよ。あの数日間でいろいろな話をしましたよね。例えば……オリオン座の神話のこととか。覚えてますか?」

 彼のは指先で萌音の涙を掬い取ると、今度は正面から彼女を抱きしめる。

「あの時はあなたを怖がらせないように、塀の上から話しかけるしか出来なかったけど、やっとあなたに触れることが出来た……」

 彼の声はどこか感慨深そうな空気を纏っていた。優しく抱き止められ、彼の香りを吸い込むだけで、萌音は眩暈がして腰が抜けてしまう。

 どうしよう……こんなこと言われたら抑えることなんて出来なくなる。

「……わ、私だってずっと触れたかったです……」

 萌音は翔の胸に顔を埋めると、ボソボソと小さな声で話し始めた。

「初めて恋をしたのもキスをしたのもロミオくんで、でもニ度と会うことはないだろって思っていたの。その後にときめいたのが店長だった……」
「えっ、私ですか?」
「そうです……でも……」

 萌音は自分の気持ちを言いかけて、慌てて口をつぐんだ。
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