Macaron Marriage
しかし突然キスは終わりを告げ、翔の唇が離れてしまう。彼は愛おしげに萌音を見つめる。
「キスはプラトニックですから。それにあなたから求められるまではキスで我慢しないといけませんからね」
それからグラスを手に取ると、萌音に手渡す。
この人はどうしてこんなに私の想いを尊重してくれるのかしら……。たった三才の差なのに、すごく大人に見えてしまう。
こんな関係を受け入れてくれる人だもの、遊びなんてことはないはず。そう信じたい。
「二人の思いが通じて、交際スタートを祝して乾杯しましょう」
二人はグラスを合わせ、ワインを飲み干す。グラスをトレーに置こうとしてふと翔を見ると、彼は空に浮かぶ月を感慨深そうに眺めていた。
「月がキレイですね」
「本当……」
すると翔がクスクス笑い出す。
「萌音さん、私が本当に月のことを褒めてるって思ってます?」
「えっ……だって月が……あっ!」
萌音はあることを思い出し、急に恥ずかしくなる。『月がキレイですね』とは、英語教師をしていた夏目漱石が『I Love you』の翻訳をする際に生徒たちに教えた言葉だと、今更になって気付いてしまう。それと同時に、昨夜交わした会話が思い出される。
彼に『月がキレイですね』と言われた後、私はなんて返したっけ⁈
「ふふふ、昨日のことを思い返してるんですか? 昨日は月がどれだけ好きかを語ってくれただけなので、私の告白には気付いてないなぁって思ってましたよ」
「ご、ごめんなさい! だってそんなこと普通は思わないじゃないですか……告白なんてされたことないし……」
俯いた萌音の顎に手を掛け彼女の顔をそっと持ち上げると、翔は至近距離まで顔を近付けてくる。
息が吹きかかる距離にドキドキしながら、彼から漂うワインの香りに酔ってしまいそうだった。
「じゃあやり直しましょう。月がキレイですね、萌音さん」
この時って、なんで答えるのが正解だったっけ……萌音は頭をフル回転させながら、オーバーヒートぎりぎり手前でなんとか答えを絞り出す。
「月は……ずっとキレイでしたよ……」
『ずっとあなたが好きでした』
その瞬間、翔はこれ以上にないくらい顔を綻ばせると、再び唇を重ね、何度も何度もキスを繰り返した。
「キスはプラトニックですから。それにあなたから求められるまではキスで我慢しないといけませんからね」
それからグラスを手に取ると、萌音に手渡す。
この人はどうしてこんなに私の想いを尊重してくれるのかしら……。たった三才の差なのに、すごく大人に見えてしまう。
こんな関係を受け入れてくれる人だもの、遊びなんてことはないはず。そう信じたい。
「二人の思いが通じて、交際スタートを祝して乾杯しましょう」
二人はグラスを合わせ、ワインを飲み干す。グラスをトレーに置こうとしてふと翔を見ると、彼は空に浮かぶ月を感慨深そうに眺めていた。
「月がキレイですね」
「本当……」
すると翔がクスクス笑い出す。
「萌音さん、私が本当に月のことを褒めてるって思ってます?」
「えっ……だって月が……あっ!」
萌音はあることを思い出し、急に恥ずかしくなる。『月がキレイですね』とは、英語教師をしていた夏目漱石が『I Love you』の翻訳をする際に生徒たちに教えた言葉だと、今更になって気付いてしまう。それと同時に、昨夜交わした会話が思い出される。
彼に『月がキレイですね』と言われた後、私はなんて返したっけ⁈
「ふふふ、昨日のことを思い返してるんですか? 昨日は月がどれだけ好きかを語ってくれただけなので、私の告白には気付いてないなぁって思ってましたよ」
「ご、ごめんなさい! だってそんなこと普通は思わないじゃないですか……告白なんてされたことないし……」
俯いた萌音の顎に手を掛け彼女の顔をそっと持ち上げると、翔は至近距離まで顔を近付けてくる。
息が吹きかかる距離にドキドキしながら、彼から漂うワインの香りに酔ってしまいそうだった。
「じゃあやり直しましょう。月がキレイですね、萌音さん」
この時って、なんで答えるのが正解だったっけ……萌音は頭をフル回転させながら、オーバーヒートぎりぎり手前でなんとか答えを絞り出す。
「月は……ずっとキレイでしたよ……」
『ずっとあなたが好きでした』
その瞬間、翔はこれ以上にないくらい顔を綻ばせると、再び唇を重ね、何度も何度もキスを繰り返した。