Macaron Marriage
* * * *
夜になり両親に寝ることを告げると、萌音は高鳴る鼓動を抑えながら部屋に入る。両親の部屋は廊下を挟んで向かい側なので、外で話している声はきっと聞こえないはずだった。
寝ていると思わせるために、敢えて照明のスイッチは入れなかった。ただそれでも窓からは月明かりが煌々と降り注ぎ、萌音を照らしていた。
窓を開け、そっと顔を出す。昨日の少年がいた場所に目をやるとそこには誰かが座っていて、ヒラヒラと萌音に向かって手を振っていた。
「良かった。窓を開けてくれた」
「だって……約束したし……」
「あはは! まぁ僕からの勝手な口約束だったけどね。でも嬉しいよ」
そう言われればそうだったかもしれない。なのにこんなにも期待していた自分が恥ずかしくなる。