彼女は僕を見てくれない
驚いて隣を見ると、

乃々華…先輩、?

吸い込まれるような大きな瞳に、長いまつ毛。血色感のある白い肌は、肩までの伸ばされた黒髪をより引き立たせるようで、
小さな可愛らしい口には薄ピンクのリップがのせられていた。

噂通り、こんなにも近くで見るとまるでお人形さんのように可愛らしかった。

「あの…」

眉をひそめこちらを見てくる先輩、
その声を聞いて我にかえった。

まずい…見すぎだっただろうか…

「は、はい!!」

慌てて返事をすると、

「あの…これ…」

先輩はメロンパンをちらっとだけ見て小さく呟いた。

あ、先輩だし…譲った方がいいか…
惜しかったけどしょうがない。

「あの!これ、どうぞ。」

メロンパンを先輩に差し出した。
正直泣きそうなほど悔しかったしめちゃくちゃ食べたい。

「…どーも」

それだけ言って、僕に背を向けて先輩は向こうに行ってしまった。

え?それだけ??ありがとうの一言もなし?!
イメージ通り冷たいクールな感じの人だったなぁ…
さよなら…僕のメロンパン…

しょぼりしつつも、
仕方なく代わりに焼きそばパンを買った。

ふと足元を見ると、なにか落ちていた。

ハンカチ…?誰のだろう…

名前を探してみると、ローマ字で
"nonoka" と書いてあった。

これ、乃々華先輩のだ…ちょっと嫌だけど、拾っちゃたし…後で届けに行くか…

そう思いハンカチをポケットに入れた。
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