放課後の音楽室で
第1章 お楽しみの時間
チャイムの音が鳴るのと同時に、ざわざわし始める教室。
「文乃、また後でね」
天文部の活動に向かう、怜ちゃんに手を振って、私はいつものように音楽室へ向かう。
「佐久間、髪切ったよな」
賑やかな廊下を歩いて階段を降りていると、背後からよく知っている人の声が聞こえた。
「上田くん。すごい、よく分かったね」
本当にちょっとしか切っていないのに、その僅かな変化に気がつく上田くんの観察力に感心する。
「だって、中学から髪型変わってないから。長さの変化、結構分かるよ」
私の横を通り過ぎながら、笑顔で答えた上田くん。
「ふふっ。さすがだね。野球、がんばってね」
「うん」
ギリギリ走らないくらいの早歩きで、昇降口へと向かう上田くんの後ろ姿を見送って、昇降口とは反対側にある音楽室へと向かう。
誰もいない音楽室に入り、ピアノの近くの机の上にカバンを置く。
グラウンド側の窓を開けて風を入れると、カーテンが優しくなびいた。
今日は何を弾こうかな。
私は、楽譜を見ない。というか、ピアノを本格的に習ったことはないから、楽譜を見ると逆に上手く弾けなくなる。
だけど、耳が良いらしく、小さい頃から聞いたことのある曲はなんとなく弾けるようになる。
センスがあるから習った方がいいと勧められたけれど、私は自由に趣味の一環でピアノを弾きたいから、こうやって放課後の怜ちゃんを待っている間のお楽しみとなっている。
「文乃、また後でね」
天文部の活動に向かう、怜ちゃんに手を振って、私はいつものように音楽室へ向かう。
「佐久間、髪切ったよな」
賑やかな廊下を歩いて階段を降りていると、背後からよく知っている人の声が聞こえた。
「上田くん。すごい、よく分かったね」
本当にちょっとしか切っていないのに、その僅かな変化に気がつく上田くんの観察力に感心する。
「だって、中学から髪型変わってないから。長さの変化、結構分かるよ」
私の横を通り過ぎながら、笑顔で答えた上田くん。
「ふふっ。さすがだね。野球、がんばってね」
「うん」
ギリギリ走らないくらいの早歩きで、昇降口へと向かう上田くんの後ろ姿を見送って、昇降口とは反対側にある音楽室へと向かう。
誰もいない音楽室に入り、ピアノの近くの机の上にカバンを置く。
グラウンド側の窓を開けて風を入れると、カーテンが優しくなびいた。
今日は何を弾こうかな。
私は、楽譜を見ない。というか、ピアノを本格的に習ったことはないから、楽譜を見ると逆に上手く弾けなくなる。
だけど、耳が良いらしく、小さい頃から聞いたことのある曲はなんとなく弾けるようになる。
センスがあるから習った方がいいと勧められたけれど、私は自由に趣味の一環でピアノを弾きたいから、こうやって放課後の怜ちゃんを待っている間のお楽しみとなっている。
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