放課後の音楽室で
「あっ、雪」

帰りのホームルームが終わると、クラスの誰かがそう呟いた。

本当だ。かなり冷え込んだもんな。

「上田くん、また明日」

「うん、また明日」

いつもと変わらない佐久間の様子に、告白の件はないんじゃないかと思ってしまう。

ソワソワしながらも、佐久間に手を振って、怜さんと教室から出て行く佐久間を見送った。

さてと…

みんなより少し後に帰る準備をして、カバンを背負い、木下と約束した空き教室へと向かう。

そっと扉を開けて中に入ると、木下はカーテンの閉まった窓際に立っていた。

「先輩、受験勉強で忙しいのに、呼び出しちゃってすいません」

「いや、大丈夫」

木下の明るい笑顔に、今から告白っていう雰囲気でもない気がした。

「話って?」

木下をまっすぐ見て、単刀直入に尋ねる。木下は、ちょっとだけ照れ臭そうに微笑むと、一歩近づいて口を開いた。

「先輩、私が野球部のマネージャーになった理由知っていますか?」

「…いや、分かんないかな…」

もしかしたら…とは思ったものの、確信があるわけじゃなかった。

「上田先輩がいたからです」

「…俺?」

木下は俺を見て、ふふっと笑うと話を続けた。

「見学の時、野球ボール飛んできた時に助けて来れたのが、上田先輩なんです。覚えてないかもしれませんが。その時から、ずっと想ってました」



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