放課後の音楽室で
答えが決まってる時の、告白って、こんなにも切ない気持ちになってしまうんだと実感して、胸がぎゅーっと握りつぶされる。

「振られるのは分かってるんです」

「えっ…」

「だって、先輩の目には、佐久間先輩しか映ってないって分かってますから」

はっきりと言い切った木下にちょっとびっくりした。

「いい加減、この気持ちにケリつけないとって思ってて…」

「そっか…ごめん」

「ふふっ…先輩先に謝っちゃダメですよ」

木下は冗談混じりでそういうと、髪の毛を耳にかけて、ほんのり頬を赤らめた。

「上田先輩、ずっとずっと好きでした。たくさんのドキドキありがとうございました」

木下が明るく言った事に俺は驚いた。振られるのが分かっているのに、こんなに堂々と気持ちを伝えてくれた木下は強い子なんだと思う。

「…ごめんな。でも、ありがとう」

俺がそう言うと、木下は頭を下げて教室を出て行った。

俺は、静まり返った教室で小さく息を吐く。

木下、ありがとう。

心の中で呟いて、俺も教室を後にした。

昇降口に差し掛かり、靴を履き替えようと手を伸ばした時、ふと音楽室に人影が見えた。

佐久間…?

そんな気がして、伸ばしかけた手を引っ込めて、音楽室へと向かう。

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