放課後の音楽室で
音楽室へと近づくと、開けっぱなしの扉から佐久間ともう1人男子生徒がいるのが見えた。

「佐久間さん、僕と付き合ってくれませんか」

男子生徒のストレートな言葉が聴こえて、俺は足を止めて扉の影になる場所に立った。

「…佐伯くん、気持ちは嬉しいけど…「どんなに頑張っても学力は君に追いつけないからこそ、心は手に入れたい」

あれ…佐伯って確かいつも佐久間に次いで成績2位の隣のクラスの。

そこで、体育館で話しかけていた男子が佐伯だと繋がった。

ちょっと、強引気味な気がするけど…大丈夫かな…。

「…ごめんなさい。私…受験もあるから…」

「じゃあ受験落ち着いてからでいいから。僕と君はきっとお似合いだと思うから」

これ、結構まずい展開だよな…。

なかなか引かない佐伯の言葉が気になって、音楽室の中を覗く。

あっ…

目に飛び込んできた光景は、強引に佐久間の腕を掴む佐伯の姿。

俺は気がついたら佐久間の元に駆け寄り、肩を寄せて佐伯から遠ざけていた。

「上田くん?」

「な、なんなんだ」

「佐伯くん、ごめん。受験終わったら、佐久間は俺の彼女になる予定だから」

俺の言葉に、佐伯は拍子抜けしたような表情を見せる。

「君が?佐久間さんと?」

すぐに表情を戻した佐伯は、黒縁メガネをクイっと指で押し上げながら俺を見る。

「うん。だからごめん。もう佐久間のことは諦めて」

自分でもこんな強気発言が出来るなんて、内心かなり驚いている。

< 103 / 120 >

この作品をシェア

pagetop