放課後の音楽室で
「上田くんって、順位表圏外だよな。そんな人とだなんて俺は信じないからな」

なんか、俺かなり馬鹿にされてるよな。順位表でしか名前見たことなかったけど、佐伯ってこんなやつだったのか。

ちょっとイラッとして、思わず険しい顔で佐伯を睨む。

「塾では僕達仲良いんだからな」

そうか、塾が一緒ってことか。接点がわかって納得。

「…佐伯くん、私あなたのように人を見下す人とは絶対おつきあいしない」

えっ…

こんな低い声の佐久間、初めて聞いた。

驚いて佐久間を見ると、うっすらと目に涙が浮かんでいた。

「佐久間…?」

「行こう、上田くん」

今度は俺に手が佐久間によって掴まれて、引っ張られる形で音楽室を出る。

いつもより早歩きの佐久間に慌てて並ぶように歩き、佐久間の顔を覗き込む。

と同時に、佐久間がコートの袖で、涙を拭った。

「…佐久間」

「…っ…上田くん、ごめんね。すごく嫌な気持ちにさせちゃった」

「大丈夫…。佐久間が謝るこよじゃないよ」

佐伯が勝手にあんなことズバズバと言い出しただけ。

首を横に振ると靴を履き替えて、佐久間はもう一度俺の手を掴んで急いで校門へと向かった。



< 104 / 120 >

この作品をシェア

pagetop