放課後の音楽室で
「…佐伯くん…塾で同じコース選んでるから、比較的話はする方だったの…。独特な人だなって思ってたけど…あんな酷い言い方する人だったなんて…本当にごめんね」

「佐久間、もう大丈夫だから」

ポロポロと我慢していた分の涙がこぼれ落ちる佐久間を見て、胸がギュッと締め付けられる。

そっと手を伸ばして、涙の伝う頬に触れる。

「…っ…」

チラチラと真っ白い雪が舞う中、佐久間の涙が次から次へとこぼれ落ちた。

その様子に、さらに俺の胸がギュッと締め付けられる。

俺のことなのに、こんなに涙を流す佐久間の真っ直ぐな気持ち。

ゆっくりと佐久間の背中に腕を回して、身体をそっと包み込んだ。

「俺は佐久間が好きで、佐久間も俺が好き。それで十分だから」

腕の中の佐久間がコクッと頷く。

「…ちょっとだけ、待ってて」

「えっ…?」

俺は道路を挟んで反対側にあるコンビニに向かった。

イルミネーションをしてある自動ドアをくぐる。

あった…。

商品をレジに差出し、財布から小銭を出してフォークを2つもらった。

佐久間と一緒に近くの公園のベンチに向かう。

「塾、何時から?」

「夕方4時から」

じゃあまだまだ時間は大丈夫。

「俺のお財布の中身じゃ、このくらいしか買えなかったけど…」

「これ…」

袋から取り出したものを見て、佐久間が口元を両手で押さえた。

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