放課後の音楽室で
佐久間の待つ音楽室へと向かう途中、佐伯とすれ違う。

あれ以来、佐伯は俺に敵意むき出しで、視線が鋭くなった。

佐伯の受けた大学も、今日合格発表だったのか。志望校は違うって耳にしてたし。

そんなことを思いながら歩いていると、耳にかすかにピアノの音が届く。

佐久間のピアノ聴くの、かなり久々だな。卒業ソングメドレーか?

佐久間のピアノを聞いてると、不思議と心が温かくなっていく。

部活のこと。学校生活の思い出。佐久間とのやりとり。恋愛話。色々な記憶が蘇ってくる。

ピアノを楽しそうに弾く佐久間の邪魔をしないように、そっと入り口近くの椅子に腰掛ける。

いい表情だな…。

思わず見入ってしまう佐久間の姿。

「あっ…気づかなかった…」

俺に気づいて、ちょっと照れくさそうな佐久間。思わず俺の頬の筋肉が緩む。

立ち上がって、佐久間の元に近づくと、佐久間も立ち上がって、ピアノの蓋を閉めた。

お互いに向き合って、視線が交わる。外から部活動中の後輩たちの声が聞こえる。

ドクンッと俺の胸が大きく鼓動した。

「佐久間、






ずっと好きだった。もちろん今でも。








俺と付き合ってください」











「はい」







お互い同じタイミングで微笑み合い、空気がふわっと柔らかくなる。



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