放課後の音楽室で
第18章 母の内側
お母さんが、妊娠した経験があったなんて全然想像もしてなかった。子どもがいたなんて聞いたことがない。
紅茶を飲むお母さんの後ろ姿を見て、両手をぎゅっと握った。
窓の外を見たまま、お母さんはもう一度話を続ける。
「でも…そんな矢先、ひどい腹痛に襲われて、早産で子どもが生まれた。小さくて、一度だけ手を握って、天国へ旅立ったわ。可愛い女の子だった」
うそ…。
胸が握りつぶされたような、息苦しさと悲しみが押し寄せる。
ううん。きっとお母さんの方が苦しんだ。
「…その1年半後、お父さんと出会った。私の過去も全部知った上で、結婚を申し込んでくれたの」
そう言って、振り向いたお母さんは目に涙を浮かべていた。
泣いてるところ、初めて見た…。
「…お父さんは、文乃さんに母親が必要だって言ってた。そして、私が本当は子どもが好きなことも見抜いてた」
「…だから、家族になったの?」
お母さんは頷いて、目に浮かぶ涙をハンカチで抑えた。
「でもね…小さい文乃さんを前にすると、やっぱり天国にいる娘のことが頭をよぎったの」
その話を聞いて、幼い頃泣きじゃくってしがみついた私を慌てて引き離した行動を思い出す。
もしかして、あの時お母さんの頭に自分の子どものことが浮かんだの…?
「母親失格。結局、私は文乃さんの母親にはなれなかったの…。ごめんなさい」
紅茶を飲むお母さんの後ろ姿を見て、両手をぎゅっと握った。
窓の外を見たまま、お母さんはもう一度話を続ける。
「でも…そんな矢先、ひどい腹痛に襲われて、早産で子どもが生まれた。小さくて、一度だけ手を握って、天国へ旅立ったわ。可愛い女の子だった」
うそ…。
胸が握りつぶされたような、息苦しさと悲しみが押し寄せる。
ううん。きっとお母さんの方が苦しんだ。
「…その1年半後、お父さんと出会った。私の過去も全部知った上で、結婚を申し込んでくれたの」
そう言って、振り向いたお母さんは目に涙を浮かべていた。
泣いてるところ、初めて見た…。
「…お父さんは、文乃さんに母親が必要だって言ってた。そして、私が本当は子どもが好きなことも見抜いてた」
「…だから、家族になったの?」
お母さんは頷いて、目に浮かぶ涙をハンカチで抑えた。
「でもね…小さい文乃さんを前にすると、やっぱり天国にいる娘のことが頭をよぎったの」
その話を聞いて、幼い頃泣きじゃくってしがみついた私を慌てて引き離した行動を思い出す。
もしかして、あの時お母さんの頭に自分の子どものことが浮かんだの…?
「母親失格。結局、私は文乃さんの母親にはなれなかったの…。ごめんなさい」