放課後の音楽室で
謝るお母さんを見て、私の目からも涙がこぼれ落ちる。

ずっとずっと苦しんでたのは、目の前のお母さんだったんだ。

ただ嫌われてるって思い込んでただけの私なんかと比べられないくらい、辛い思いをしていた。

私は、気がついたらお母さんにぎゅっと抱きついていた。幼い頃とは違い、同じ背丈になったお母さんは、すごく細かった。

「…私、お母さんの料理大好き。年に1、2回しか食べられないのが残念なくらい…」

身体を離して、向かい合ってそう伝えると、お母さんは初めて私の前で笑ってくれた。

「…っ…今日の夕飯は、私が作るわ」

涙を拭いながら答えたお母さん。私は、初めてありのままの気持ちを伝えられた気がした。

気がついたら、いつの間にか上田くんは部屋を出ていっていて、姿が見当たらなくなっていた。

気を遣ってくれたんだ。

「…少し早いけれど、誕生日プレゼントも用意してたの。受け取ってもらえる?」

クローゼットからもう一つ紙袋を取り出したお母さん。紙袋の中から、素敵なデザインの春用のワンピースを取り出して私に見せる。

「素敵…」

「これも新作。大学生になるから、少し大人っぽいデザインのものよ…」

服の話をしているときのお母さんは、いつも以上にキラキラと輝いている。



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