放課後の音楽室で
「お母さんとも話せて良かったな」

家を出て、上田くんと一緒に近くの公園のベンチに座って話をする。

「うん…。上田くん、気を遣って2人きりにさせてくれたんでしょ?」

「…本音で話せそうだったから。俺聞かない方がいいと思って」

上田くんはそう言ってちょっとだけ照れ臭そうに髪の毛をくしゃっとした。

「…なんだかんだ、色々なことが平和に解決して一安心だね」

嬉しそうにいう上田くん。

「うん。私ね、上田くんがいてくれたから学校っていう場所がすごく居心地良くなったの。そして、家族のことも、上田くんのおかげで一歩踏み込めた」

孤立していた私に手を差し伸べてくれた上田くんは、救世主。

そしていつのまにか、恋愛感情が芽生えていて、かけがえのない存在となっていた。

「…面と向かって言われると、結構恥ずかしい」

照れ臭そうな上田くんに、私の口からふふふっと声が漏れる。

ふと、上田くんの手が、優しく私の髪の毛に触れる。

真っ直ぐな瞳で私を見つめている上田くんから目を逸らせない。

ドクンッと大きく心臓が音を立てた。

「…キスしていい?」

「えっ…」

まさかの言葉に、私の顔が一気に熱くなる。

真っ直ぐ私を見つめたままの上田くんの目を見たまま、小さく頷く。

ドクンドクンと心臓の鼓動が速くなった。

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