放課後の音楽室で
ゆっくりと上田くんの顔が近づいてきて、一瞬だけ唇が重なった。

お互い気恥ずかしくなって、視線を逸らして前を向く。

「…佐久間、大学でもいっぱい思い出作ろうな」

「うん」

上田くんはの手が、膝の上の私に手の上に添えられる。

「誕生日の日、デートしよう」

「デート?」

「どこか行きたいところある?」

行きたいところ…。あっ…

「…水族館。この前リニューアルオープンしたってニュースで見たの」

「うん。そこにしよう」

上田くんはスマホを取り出して水族館を検索し始めた。

「朝9時からだって。じゃあ駅に8時半ごろ待ち合わせでいい?」

「うん!」

水族館、すごく楽しみ。私はいつのまにかキスの恥ずかしさを忘れていた。

「佐久間」

名前を呼ばれて、上田くんの方を振り向く。

チュッというリップ音を額に感じて、ドキッとした。

「…油断した?」

恥ずかしそうにそう言った上田くんの言葉に、再び私は顔が熱を帯びた。

「もう…」

不意打ちのおでこへのキス。今までこういうことがなかったからドキドキが止まらない。

ふわっと私の身体を上田くんの腕が包み込む。

「…俺、佐久間のこと好きすぎるらしい…」

耳元で聞こえた言葉に私は今茹で蛸状態。

「…俺、きっと一生佐久間のこと手放さないよ?」

「うん。いいよ」

ずっと、隣にいられたらいいな。そう思いながら、私も上田くんの腰に手を回した。

















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