放課後の音楽室で
ずっと隣で
キラキラと輝くようにネックレスを朝日の光に照らす。
引っ越したばかりの部屋のインターホンが鳴り、慌ててネックレスをつけて扉を開ける。
「一緒に行こう?」
そう言ったのは、朝から眩しい笑顔の上田くん。
「うん!荷物とってくる」
ベット横に置いてあるバックを持って、靴を履く。
すぐ裏のアパートに住んでいる上田くんは、毎朝私を迎えにきてくれる。
大学に向かって歩く道の景色にもだいぶ慣れてきた。
「俺、今日バイトだから、夜ご飯食べちゃっていいから」
塾講師のバイトを始めた上田くんは、週3回帰りが遅くなる。
住む部屋は別々だけど、夜ご飯は交互に作っている。ちょっと同棲してる気分になる。
「うん。帰り気をつけてね」
「佐久間も、気をつけて」
そんな会話のやり取りでさえ、すごく平和で幸せを感じる。
「今度の休み、花見行こう」
「それすごく素敵」
ふふふっと笑うと、上田くんも嬉しそうに微笑む。
ふと、住宅街からピアノの音色が聴こえてきた。
心の中に懐かしさが込み上げてくる。
「久々に、佐久間のピアノ聴きたくなった」
上田くんも同じ気持ちになったのかな?
「電子ピアノでよければ、また弾くよ?」
実は家から電子ピアノを持ってきていて、ヘッドフォンをつけて練習している。
「じゃあ明日の夜聴く」
楽しみな様子の上田くんに、私も弾くのが楽しくなる。
またお互いの視線が交わって、微笑みあった。
微笑みながら、こう思う。
この素敵な時間が、いつまでも続きますように。
fin 2022.11.27