放課後の音楽室で
「お、おはよう」

朝から上田くんが家に来るなんて思ってもみなくて、少し緊張してしまう。

大きなスポーツバックをかけた制服姿の上田くんは、私の顔をじっとみて、そして視線を私の頬に向けた。

あっ…

そっか、上田くん私の怪我を気にしてるんだ。だから、きっと家に寄ってくれたんだと思う。

「おはよう、佐久間」

「早いね。どうしたの?」

あえて、気がついていないふりをして、聞いてみた。

「…いや、あの…。1人で行くと、色々心配なことあるのかなって…」

言いにくそうに、そう伝えてくれた上田くんに、私は思わずふふふっと笑った。

「ありがとう。実はね、新田さんが送ってくれるって言ってたの」

「あっ、そっか。そうだよな。…それなら良かっ「でも、上田くんと行きたくなっちゃった」

「えっ?」

言葉を遮った私の言葉に、上田くんはキョトンとして私をまっすぐ見た。

「待ってて、5分で準備してくる!」

「あ、うん」

急いで家に入り、食べかけのご飯は最後まで食べて行く準備に取り掛かる。

最後に玄関近くの全身鏡で確認して、頬の怪我にそっと触れた。

きっとどう隠したって、隠しきれなくて、視線を感じてしまうのだと思う。

だけど…

上田くんが隣にいると思えるだけで、ちょっと気持ちが救われる気がする。



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