放課後の音楽室で
桜の花びらが1枚開けていた窓から入ってきたのが見えて、ひらめく。

有名なアーティストの春の歌。

ピアノの前に座って、目を瞑り、頭の中で曲を再生する。

うん、これからスタート。

指を鍵盤に置いて、ゆっくり目のテンポで音を繋いでいく。

優しく吹いている風のテンポと合っている気がして、気持ちが穏やかになる。

ふふっ。

楽しいな。

最後まで弾き終わって、なんとなく立ち上がる。

グラウンドから聞こえてくる野球部の掛け声に吸い寄せられるように、窓際へと移動した。

この声、上田くんだ。

5年間も聞き慣れた声は、他の部員と混ざっていてもすぐに分かる。

あまり、視力は良くないから、同じ練習着を着ている部員の中から上田くんを探すことはできないけれど、声が分かるだけで、ちょっと嬉しくなる。

私は、昔から学校があまり好きではなかった。

型にはまったことを続けるのが苦手な私は、きっと先生からは扱いにくい子だと思われていたと思う。

特に、小学校高学年の頃はそれが顕著に表れていたと思う。

中学に上がってからも、私はちょっと変わった子だと思われていたと思う。

どうして、決められた宿題を毎日やって出さないといけないの?自分で決めてやっちゃダメなの?

給食の牛乳は必ず飲まないとダメ?牛乳は朝飲んできてるのに?

そんなに大きくルールを破るわけではないけれど、細かいところで疑問に思って立ち止まっていたと思う。




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