放課後の音楽室で
「ううん、すごいよ。こんな短時間で前を向いてるんだもん」

「それは…周りに恵まれてるからだと思うよ」

そう言うと、佐久間は頷いて、優しく微笑んだ。

「ちなみに…その中に佐久間もちゃんと入ってるから」

「えっ、本当?」

「うん。さっき待っててくれて、結構元気出た」

嬉しそうににこにこ笑う佐久間の姿はに俺は結構元気をもらっている。

「よかった」

あれ…?

ふふ笑った佐久間の笑顔に、一瞬ドキッとしたのは、一体なんなのだろう。

そう思いながら、俺は佐久間と並んで学校へと向かった。











高梨先生と相談して、しばらくの間のトレーニングメニューを決める。

結構きつくて、でもそれだけまだまだ鍛える部分がたくさんあると実感できてさらにやる気が湧いてくる。

『上田、夏の大会は無理させないから。新人戦を見据えて行く』

昼休みに、高梨先生に呼ばれて、メニューを渡された時、先生ははっきりそう言った。

つまり、よっぽどのことがない限り、俺を夏の大会に使う予定はないということ。

正直、悔しい気持ちはあった。だけど、新人戦を見据えることは、俺の可能性はまだまだあるということも意味していた。

だから、焦って中途半端になるよりは、ちゃんと治して鍛え直して、戦力になりたいと思ったんだ。

額から流れる汗を首にかけたタオルで拭う。

あっ…ピアノの音。


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