放課後の音楽室で
いつもは、大きな声を出しているから、じっくり耳にすることのない佐久間のピアノ。

どうやって指動いてるんだろう。

そう思うくらい、いろいろな音が同時にメロディーを奏でている。

あっ、この曲知ってる。よく野球応援で使われているものだ。

なんか、ちょっと背中押されてる気持ちになる。

トレーニング、頑張ろう。











「圭介、すごい汗だね」

同じ野球部の同級生の慎吾が、部活終わりの更衣室で、俺の汗を見て驚いていた。

びしょびしょのシャツを脱いで、タオルで身体を拭く。

「下半身のトレーニング結構きつくて」

「すごいな。俺も負けてられないな」

そう言って、制服に着替える慎吾。

俺はもう一度体を拭き直し、新しいシャツを着た。

「今日は、佐久間と帰んの?」

「え?佐久間?いや、約束してないし、友達と帰ってるんじゃない?」

慎吾の急な質問に不思議に思いながら制服に袖を通す。

「そうなの?正直、圭介と佐久間ってどんな関係なの?」

どんな関係?

「いや、普通に友達だと思うけど。結構誤解されてるけど、付き合ってるとかじゃないから」

一緒にいて楽しいし、波長も合うからなのか居心地いいし。


「…側から見ると、両想いにしか見えないけどな」

「は?…いや、それ佐久間に失礼だから」

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