放課後の音楽室で
「何時ごろ終わります?」

「7時半くらいかな。遅くなるとまずい?」

「いえ、家の人に一応帰宅時間連絡しておきたくて」

新田さんが心配しちゃう。

「その練習場所、俺にも教えてもらっていいですか?」

え?

私じゃなくて、上田くんがスマホを取り出して尋ねた。

「ちょうど部活終わるし。迎えに行くから一緒に帰ろう?」

そうさらっと言い切った上田くんが、ちょっと頼もしく感じる。

「あっ、もしかして、彼氏だった?」

「えっ、そういうわけじゃなくて。帰り道一緒なんで」

「なんか、青春ね」

ふふっと笑った先輩は、もう1人の男の先輩の肩に手を添えた。

なんだろう、一つしか学年変わらないのにすごく大人に見える。

「先輩達こそ、青春じゃないですか。バンド組んでるって、すごいですね」

「ありがとう。えっと、名前は?」

「上田です」

あっという間に、先輩達と打ち解ける上田くんって、やっぱりすごいなあって思う。

「じゃあ、放課後校門で待ち合わせで」

「はい」

先輩達はそう言うと、階段を降りていった。

「すごいな佐久間。スカウトなんて」

「で、でも、期待に応えれるか…」

「大丈夫だって。佐久間なら。楽しめるならやってみればいいと思うよ?」

上田くんの言葉は、私の背中をいつも少しだけ押してくれる。

「うん」


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