放課後の音楽室で
「どう?」

演奏の終わった後、村井先輩は額の汗をタオルで拭いて私に尋ねる。

「…すごい。凄すぎます!」

その言葉しか出なくて、三人を見てそう言い切ると、真中先輩が私を手招きした。

「今度は、佐久間さんも一緒に楽しもう?」

「はい、準備は出来てます!」

先輩達のメロディーが頭にしっかりインプットされている。

「もう、弾けちゃうの?」

菊池先輩が、驚いた表情で私を見る。

「はい!」

楽しみで、ワクワクが止まらない。

「天才ね」

ふふっと村井先輩は笑うと、ギターを肩にかけてマイクの前に立った。

そして、私がキーボードに指を置いたのを確認すると、合図を出した。

先輩達の演奏を邪魔しないように音量やアレンジを変えながら演奏していく。

音の重なりの少なかった部分で、キーボードの演奏を多めに入れると、菊池先輩と目が合った。

先輩は嬉しそうに頷いて、私の考えを優先してくれたのがわかった。

楽しい。

誰かと一緒に音楽を奏でるって、すごく楽しい。

そして、最後のサビでは、村井先輩の綺麗で力強い声を邪魔しないように、少しだけ声を出してハモってみた。

あっ…

3人の先輩達の視線が一瞬私に向いて、出過ぎたことをしちゃったと、ちょっとドキッとした。

楽しくて、つい…。

やっちゃったかな…。気悪くしてないといいけど。

心配しながらも最後まで演奏し終え、キーボードから指を離す。

< 27 / 120 >

この作品をシェア

pagetop