放課後の音楽室で
「すっげー。佐久間さん、天才的!」

間中先輩が、私の両肩をガシッと掴んで、テンションの高いまま言った。

「演奏もだけど、歌もイケるんだ?」

菊池先輩は、ベースを下ろしてにっこり笑う。

「私、こんなに綺麗にハモってもらったの初めて」

村井先輩は、私にぎゅーっと抱きついた。柑橘系の爽やかな香りが私を包み込む。

「どう?答えは、出た?」

菊池先輩が、穏やかな口調で聞いた。

私の中で、演奏中答えは出ていた。

「私、誰かと演奏するのがこんなに楽しいって知らなかったです!よろしくお願いします」

私の言葉を聞いて、先輩達が心から嬉しそうに笑ってくれたのが分かって、私はさらに嬉しくなった。

「佐久間さんって、ピアノ習ってないんだって?」

水を飲みながら、真中先輩が言った。

「はい。型にはまって練習するのが苦手で」

「それって、もう天才の域よね。こんなに上手なんだもん」

そう言って村井先輩は、サラサラのロングヘアをシュシュで一つにまとめた。

「文化祭では、今の曲を含めて3曲やる予定なんだ」

菊池先輩が私に2曲分の楽譜を手渡す。

これもオリジナルの曲だ。

「先輩達、自分達で作ってるんですね」

「うん。俺らみんな音大とか、音楽系の専門学校志望だから、それも含めてね」

そっか、3年生だから進路も見据えていかなきゃいけないんだ…。

私は、全然進路考えてないな。

< 28 / 120 >

この作品をシェア

pagetop