放課後の音楽室で
第7章 期限
「…叶わないって言うなよ…」

「えっ…?」

上田くんが、悔しそうな悲しそうな、怒っているような色々な感情の入り混じった表情で呟いた。

「俺だって、佐久間のこと好きだよ。今日気づいたけど…。両想いなのに叶わないってなんだよ…」

両想い…。

「…っ…嘘」

「嘘じゃない」

そうはっきり言った上田くんは、そっと私の身体を抱きしめた。

お互いの心臓の音が耳に響く。

「…佐久間、誕生日いつ?」

「…3月22日」

「…じゃあさ、18才になる誕生日までに…俺、佐久間の両親説得する」

えっ…?

「ま、待って。私の両親、頭固くて…」

「…うん…それまでに、説得できるように色々考えるから。だからさ、叶わないなんて言わないで?」

上田くんはそう言うと、私の身体をもう一度、ぎゅっと抱きしめた。

そして、抱きしめたまま、私の頭上で言葉を続ける。

「…認めてもらえるように、色々頑張るから。それまで待っててよ。…俺のこと好きでいてよ…」

上田くんの言葉が嬉しくて、私は涙を流しながら、何度も何度も頷く。

「色々話がまとまって、無事18才になったら、ちゃんともう一度言わせて?」

「…っ…うん」

私は、震える声で返事をして、上田くんの腰に腕を回して力を込めた。


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