放課後の音楽室で
「…かわいい…」

ヘアピンを手に取って嬉しそうに笑う佐久間の表情に、俺の胸がトクンッと鼓動する。

「シャーペンも音符マークだ」

ふふふっと微笑む佐久間は、長い髪の毛を耳にかけた。

その仕草に、ドキッとした自分に気がつき、恥ずかしくて笑って誤魔化した。

すると、佐久間は、俺との距離をちょっとつめて、俺の顔をじっと見つめる。

「上田くん…顔赤い」

「…気、気のせい」

佐久間はふふふっと笑って、そっと俺の腰に手を回した。

佐久間の鼓動が伝わり、俺の鼓動が速くなる。

「さ、佐久間…?」

「…ちょっとだけ」

俺の胸元にピタッとおでこをくっつける佐久間に、動揺しながらも、俺も佐久間の背中にそっと腕を回した。

「…汗臭くない?」

「全然…」

ぎゅっと俺の腰に回した手に力を込める佐久間。

「…さっきまで…寂しかったの。いつものことだけど、両親は私の誕生日だって忘れてるってふと思い出しちゃって…」

そうだったんだ…。

「…来年も、俺、こうやっておめでとうって言うつもりだよ」

佐久間は俺の胸の中で頷く。

その仕草が、無性に可愛くて、俺の鼓動は一気に速くなった。

「佐久間」

名前を呼ぶと、佐久間が顔を上げる。ほんのり赤く染まった頬で俺を見る。



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