放課後の音楽室で
第9章 進路の悩み
最近、兄貴に彼女ができた。昔幼馴染だったトモさん。

今日は、そのトモさんが家に遊びに来た。

いつも以上にテンションの高い母さんと、兄ちゃんが彼女を連れてくると聞いて、お酒を買いに出かけた父さん。

どうやら、話を聞いていると、昔から母さん同士が、そうなったらいいなあと妄想していたらしい。

「すげー。少女漫画の世界みたい…」

思わず心の声が漏れてしまった。

ふと、兄ちゃんとトモさんは、結ばれたからいいけれど、お互いタイプじゃなかったら迷惑な話だよな、と思った。

結果的には良かったのだけど…。

佐久間は、会ったことも見たこともない相手との結婚を強制的に決められている。

御曹司って言ってたよな…。

家柄的に、そう言う人じゃないとふさわしくないって考えてるのだろうか。じゃあ、俺が真正面からぶつかって行っても、佐久間の両親が納得するわけないか…。

つまり、俺の進路次第か…?

医者?弁護士?一流企業に就職?

…俺の頭で、そこまでいける保証は、どこにもない。むしろ、かなりハードルが高い。

感情論で揺れ動く両親だとも思えないし…。

はあ…。

小さく息を吐くと、兄ちゃんが俺の顔を覗き込んだ。

「どうした?恋煩いか?」

「…違うし」

兄ちゃんは、多分恋愛は遠回りするタイプ。そして、たぶん空回りもする。

人のことは言えないけど、兄ちゃんにバレたら面倒なことになりそうな気がする。

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