放課後の音楽室で
「圭ちゃん、イケメンだからモテるでしょう?」

俺と兄ちゃんのやりとりを見ていたトモさんがそう言ってふふっと笑う。

モテる?俺が?

「全然。モテたことない」

「そう?修ちゃんそっくりだから、てっきり」

それって、なんか兄ちゃんのことのろけてない?

と思ったけど、あえてツッコミを入れるのはやめた。

兄ちゃんも照れてるし。

仲良いな。

ちょっと羨ましい気持ちもあるけれど、自分より年上の2人がデレデレしてるのを見るのってちょっと気まずい。

「そういえば、この前、圭ちゃん見かけたの」

「えっ?どこで?」

「駅前の方。女の子と男の子数人で歩いてるの見たの」

ああ、大貴が家に誘ってくれた時か。佐久間と怜さんと慎吾と大貴と歩いてたから、それ見たんだ。

「青春してるなあって、懐かしくなっちゃった」

トモさんはそう言って、優しく微笑んだ。

「その中に、好きな子いるんだ?」

兄ちゃんの鋭いツッコミに、俺は一瞬ドキッとした。

「…教えない」

そう答えてしまってから、それって肯定しているもんだなと、後悔した。

兄ちゃんはクスッと笑って、俺の頭を子ども扱いするみたいに撫でる。




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