放課後の音楽室で
第2章 怪我とお茶会
話を聞いた中川先生がジャージ姿の高梨先生と一緒に音楽室に向かって来ていて、俺は佐久間の状況を伝えた。

「傷、見たいからまず保健室に行きましょ」

中川先生は、冷静にそう言うと、佐久間の肩に手を添えて廊下を歩いて行った。

「上田、状況見てたか?」

「はい…。1年が投球練習をしていて、捕り損ねたボールが窓に当たりました」

なんか、校舎に近すぎるよな。

投球練習が始まってすぐに、いつもと場所がずれていることに気がついていた。

あの時、躊躇せず、伝えればこんな事にならなかった。

「投球練習の場所がずれていたことに気がついてたのに伝えなかった俺のせいでもあります」

本当は、ちゃんとネットが張ってある所で、安全に行うべきこと。

「そうか。ありがとう。上田のせいではない。最終的には指導計画立てている顧問の責任だから」

高梨先生は、優しい表情でそう言うと、俺のかぶっていた帽子に、ぽんっと手を置いた。

「上田は練習戻ること」

「はい」

心の中で、佐久間のことを気にしながらも、俺はグラウンドへと戻った。







「…上田さん」

先生から指導を受けて、音楽室の片付けを終えた1年4人が戻って来て早々に、着替えをしていた俺を呼び止める。

「「すいませんでした」」

4人は声を揃えて俺に謝る。




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