放課後の音楽室で
「慎吾は進路決めてる?」

部活終わりに、着替えながら尋ねてみた。

「俺は地元の大学の経済学部。俺ん家工場だろ?後継って流れになってるから」

慎吾の話に耳を傾けながら、将来の就職も見据えていることが羨ましく思えた。

「その顔だと、圭介はまだってとこか」

「うん。自分がやりたいことってなかなか見つからないんだな」

そう言うと、慎吾はロッカーを閉めながら俺をみた。

「…学校の先生は?」

えっ…?

「圭介、教えるの上手いじゃん。野球もだけど、勉強も分からないところあると、自分でも調べて丁寧に教えてくれるし。向いてると思うけどな」

慎吾の言葉に、俺はかなり驚いた。そんなこと言われたの初めてだったから。

「それ、全然選択肢になかった」

「あ、マジ?結構いいと思うけど?」

慎吾は肩にスポーツバックをかける。俺もロッカーを閉めてスポーツバックを肩にかけた。

学校の先生か…。

でも、確かに教えるのは嫌いじゃない。自分もそんなに色々器用にできるわけじゃないから、自分が見つけたやり方とか考え方を、同じように苦労してる人に教えてあげたいって思うし。

高校…?いや、どっちかって言うと中学の方がいいかも。

大学調べてみるか…。



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