放課後の音楽室で
でも、それって、佐久間の両親を説得できる進路か?

でも、公務員って安定してるし…。

佐久間も言ってたけど、自分がやりたいこと考えたほうがいいよな。

佐久間は医者で、俺は教員。

うーん…収入格差はありそうだけど。

そもそも、俺って佐久間の許婚と張り合えるくらいに、とか格差が…と気にしてるけど、そこからして間違えてる気がしてきた。

「圭介、どうした?」

俺の目の前で不思議そうに手を振った慎吾に、俺ははっと現実に引き戻される。

「あっ、いや、ちょっと考えごと」

「提出期限、2週間後だったろ?ゆっくり考えればいいと思うよ」

「うん。そうする」

そうだよな。もう少し時間かけて考えたほうがいいよな。

進路だけでなくて、佐久間のことも。










「あっ、上田くん」

校門に差し掛かると、佐久間が俺を待っていた。

「あれ?佐久間さん、今日は怜さんと一緒じゃないんだ?」

驚いて、反応の遅れた俺に代わって、慎吾が佐久間に尋ねる。

「うん。ちょっと上田くんに話しがたいことあって。でも、立花くんと帰るなら、また日を改めるね!」

「ああ、いいよいいよ。俺、この後塾でちょっと急がないといけないから。先行く。じゃあ、圭介また明日な」

「あっ、うん」

急いでその場から去っていく慎吾を見て、今日は塾じゃなかった気がするけど…と思った。





< 53 / 120 >

この作品をシェア

pagetop