放課後の音楽室で
それから、私とお母さんはどこかぎこちなく、今までもずっと微妙な距離のまま。

「…じゃあ…どうしてここに帰ってこないの…?」

「それは…」

新田さんは、急に口籠もって私を見ると、

「…奥様のご事情ですので、私の口からは…。いつか、分かる時がきますよ」

これ以上深く聞いてはいけない気がして、私はスープを口に運んだ。

「そういえば、今日と明日は旦那様は出張で不在です。明後日お休みだとおっしゃってたので、その時に進路やご結婚のことお話ししますか?」

「はい。そうします」

そっか…。じゃああと3日間、ううん土日も挟むから5日間は休みになるんだ。

スマホもないし。

怜ちゃん、心配してるだろうな。

あと、上田くんも昨日の夜、あんな別れ方したし…。

小さく息を吐いて、私はもう一口スープを飲んだ。

空腹だったお腹に優しい味のスープが染み渡っていく。

「…つかぬことをお聞きしますが、上田さんとは、お付き合いされてるのですか?」

えっ…

「そ、そんなんじゃない…けど…」

急に上田くんの話題が出てきて、私の体が熱ってくる。

「ふふふっ。その様子だと、相思相愛なのですね」

新田さんは優しい表情で微笑むと、キッチンへと向かった。

新田さん、なんでもお見通しなんだ…。








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