放課後の音楽室で
第11章 覚悟
佐久間が休んで3日目。流石にあれ以来、連絡がつかないから心配になる。

今日、雨降ってるし、ちょっと早く部活終わるんだよな。明日は、佐久間が婚約者と会う日だし、ちょっとだけでも佐久間に会えないかな…。

でも、佐久間のお父さんと遭遇したら、話がこじれてしまうのか?

「上田くん」

昼休み、怜さんに呼ばれた。

「ちょっと」

手招きされて近づくと、怜さんは悲しげな表情で一言、

「文乃、お父さんと話がこじれたみたい」

あー…やっぱりそうだったか…。

怜さんの言葉に俺は小さく頷いた。

「…文乃のこと好きなんでしょ?どうにかしてあげられない?」

怜さんが、こうやって俺を頼ることは珍しかった。

よっぽど、佐久間とお父さんの関係良くないんだな…。

「…今日家に寄ろうと思ってたから…」

そう言うと、怜さんはちょっと驚いた表情をした。

「そうなの?」

「…うん。流石にこのままじゃ佐久間が可哀想だよ…。俺に何ができるかは分かんないけど、とりあえず、行ってみる」

そう言うと、怜さんは安堵の表情を浮かべた。

「…文乃のこと、好きになってくれたのが上田くんで良かった」

その言葉が妙に嬉しくて、俺は思わず笑ってしまった。

怜さんは、

「…ありがとう」

と言って、ちょっと照れくさそうに教室へと戻っていった。





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