放課後の音楽室で
「さ、佐久間」

かなりの距離を小走りした佐久間は、息を切らせて立ち止まる。

「な、なんで急に…?」

「…だって…っ、上田くんにまで色々決めつけた言い方してたから…許せなかった…」

もう傘の意味すらなく、俺たちに服はびしょびしょだった。

「だけどさ、こんな家出みたいなこと…」

帰らないって言い切っちゃってたけど、現実的にそれは無理があって、やっぱりまだまだ俺たちは子どもなんだと思う。

それにしても、佐久間が感情的になるのは本当に珍しい。

「…とにかく、このままじゃ風邪ひくだろうし…俺ん家来る?」

「えっ…」

あっ…

「いや、変な意味じゃなくて、母さんはいるだろうから、とりあえずタオルだけでもって…」

「うん…ごめんね」

申し訳なさそうに言った佐久間の頭をポンポンっと優しく撫でて、2人で一つの傘に入って家に向かった。










「あら、2人ともそんなに濡れて、どうしたの!?」

家に帰ると、佐久間が一緒にいることよりもずぶ濡れになっていることに驚いた母さんは、パタパタとタオルを持ってきた。

「シャワーだけでも浴びて、体温めて?服は…圭介の中学の時に来てた服でいいかしら?」

「い、いえ…タオルだけで十分ですので」

「何言ってるの。圭介が一緒にいながら風邪引かせちゃったら大変」

「…俺?」

「そうよ。女の子1人大切に出来なくてどうするの」

なんか、俺怒られてる…。



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