放課後の音楽室で
家に着いて、新田さんと話をしていると、書斎から出てきたお父さんは、リビングのテーブルに私のスマホをそっと置いた。

「…メールや電話が鳴り響いていたから、電源は切ってある」

そう言って、すぐにリビングを出ていったお父さん。

私は、ゆっくりとスマホを手に取って、電源を入れる。

…怜ちゃんと上田くん、いっぱい連絡くれてたんだ…。

「…旦那様と文乃さん、お二人の間の空気、変わりましたね」

新田さんの言葉に、顔を上げると、嬉しそうに微笑んでいた。

「本当?変わったかな?」

「はい。距離が縮まったことが分かりますよ」

そうなんだ。自分ではまだぎこちなさがある気がするけど…。

でも、ちょっぴり嬉しいのが本音で、私は新田さんと微笑みあった。

「そういえばね…」

一度辺りを見渡して、お父さんがいない事を確認し、私は上田くんのパンナコッタの話を新田さんに教えた。

新田さんは上田くんとお父さんの偶然の重なりに驚き、そしてふふっと笑うと、

「旦那様もまさかと思われたでしょうね」

と言って、もう一度微笑んだ。

「ちょっとは、上田くんと距離近くなったかな?」

「ええ、きっと。好みが同じで嫌な気はしないと思いますよ?」

よかった…。



< 82 / 120 >

この作品をシェア

pagetop