放課後の音楽室で
「進路も納得してくれたんでしょ?」

隣を歩きながら、怜ちゃんが聞いてきた。

「うん。だから、勉強頑張らなきゃ」

「文乃なら大丈夫だよ」

「俺も、そう思う。佐久間いつも学年トップじゃん」

すぐ後ろを歩く上田くんが。怜ちゃんの言葉に納得した様子でそう言った。

「でも…世の中には頭いい人いっぱいいるから」

私の努力は全然足りないって思う。だからこそ、ちゃんと自分の進路を実現できるように頑張らないと。

「怜ちゃんは?」

「私は、調理の専門学校かな。将来はシェフになりたいの」

「料理、上手だもんね!」

お弁当もいつも自分で作ってるって言ってたし、たまに作って持ってきてくれるおやつも絶品。

「上田くんの進路は?」

怜ちゃんが後ろを振り返って上田くんに尋ねた。

話を振られてちょっと驚いた様子を見せた上田くんは、ちょっと考えて、

「吟味中」

とだけ答えた。

上田くん、まだ悩み途中なのかな。

「結構、悩んでる人多いみたいだから、焦らなくてもいいのかも」

怜ちゃんは、そう言って前を向き直すと、ふふっと優しく微笑んだ。

上田くんが気にしないようにフォローしたのかな?

怜ちゃんは、すごく優しい。たまに男の子に厳しいところもあるけれど。

怜ちゃんの隣にいると安心できる。

「顔に何かついてる?」

「ううん。怜ちゃんと一緒に入れて嬉しいなって」

私は、怜ちゃんにふふふっと微笑み返した。





< 84 / 120 >

この作品をシェア

pagetop