放課後の音楽室で
高梨先生には、私たちのことどう映ってるんだろう。

ふと、上田くんを見ると、ちょっと恥ずかしそうな表情をしていた。

「…多分、高梨先生は、俺と佐久間が仲良いの、違う意味で捉えてるみたい」

ポリポリと頭をかく上田くんの言葉に、私の体温も上がる。

「…一応気持ちは一緒だから間違ってるわけじゃないけど」

上田くんの言葉に、私も頷く。

同じ気持ちだから、勘違いってことではないんだもんね。

そう思うと、ちょっとだけ心拍数が早くなった。

お互い照れ臭くて、沈黙が続く中、校門を出る。

「そういえば…進路の話なんだけど」

私の隣を歩く上田くんが、ゆっくりと話し始めた。

「俺さ、学校の先生になろうかな…って思い始めてて」

「学校の先生…うん。すごくいいと思う!」

誰とでも仲良くなれるし、周りのことをよく見ている上田くんにぴったりだと思う。

「本当?そう言ってもらえて嬉しいよ…。でも、それって、佐久間のお父さん納得してくれるのかな」

えっ…。

上田くんの言葉に、胸が締め付けられる。本当は、上田くんが進路を決める上で、お父さんのことなんて気にすることではないものだから。

上田くんの人生を、私の親子関係で変えたくない。


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