放課後の音楽室で
それに…

「上田くんのやりたいこと突き通してほしい。私だって、そう出来たんだもん」

大丈夫。

きっと上田くんのまっすぐな姿勢は、お父さんが理解してくれると思う。

「それに、公務員。安定してるでしょ?」

そう冗談混じりに言うと、上田くんは優しく微笑んでくれた。

「うん。ありがとう。なあ、佐久間…」

徐々に暗闇と変わる道の端っこで立ち止まった上田くん。

薄暗い中、目があって、心臓がドクンと大きな音を立てる。
















「……いや、部活引退したら言う」

「えっ…」

上田くんはそう言うと、頭をかいた。今、ものすごく心臓がドキドキしてる。

一瞬、期待しちゃった…。

そう思って、両手で頬を抑えていると、私の左手が上田くんの手によってスッと握られた。

そのまま何も言わずに手を繋ぐ形になって、上田くんはゆっくりと歩き始める。

その行動に、私の顔はものすごく熱くなった。

「…俺、勉強も頑張るから」

「うん。私も頑張る」

それ以上、特に会話はなかったけれど、上田くんの思っていることは十分伝わってきた。

「じゃあ、また明日」

「うん。送ってくれてありがとう」

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