放課後の音楽室で
次の日の夕方、約束の時間より15分くらい早く待ち合わせの公園に行ったのに、佐久間はもう来ていた。

「上田くん、久しぶりだね。ごめんね急に」

「久しぶり。全然平気。元気してた?」

久しぶりに見る佐久間は、髪の毛が伸びていて、ちょっと大人っぽい雰囲気になっていた。

夏用のノンスリーブのワンピース姿の佐久間が、いつもより肌の露出が多くてドキッとする。

そんな視点で見たいわけじゃないのに…。

「元気だったよ?…これ渡したかったの」

そう言って佐久間は俺に小さな紙袋を差し出した。

「上田くん、明後日誕生日でしょ?」

あっ…そうだった。

「プレゼント…準備してくれたの?」

「うん。明後日渡したかったけど、模試が入ってて」

忙しいのに、わざわざ準備してくれてたことが、すごく嬉しい。

「佐久間、ありがとう」

「ふふっ。よかった、渡せて」

佐久間は嬉しそうに笑うと、ベンチにゆっくりと腰を下ろした。

サラサラっと長い髪の毛が揺れる。それだけなのに俺の胸の鼓動が速くなっていく。

あっ…

「髪飾り使ってくれてるんだ?」

誕生日にあげたピンをつけてることに気がついて、テンションが上がる。

「うん!塾の友達にも、似合うねって褒められたの」

嬉しそうな佐久間の姿に、ほっと胸を撫で下ろす。

よかった。

< 93 / 120 >

この作品をシェア

pagetop